塗り替え工事でうかがっているお宅で親しくなった高齢のお客さんが僕に話しかけてきました。
「不発弾?爆発しなかった爆弾のことですよね」
「そうそう、それそれ(^.^)なんで爆発しなかったんだと思う?」
「やっぱり故障だとかそういうのが混ざってたんですかね~」
「もちろんそういうのもあるよ。でもね、もっと単純な理由のもあるんだよ(^o^)」
「単純?どういう意味ですか?」
「わしはね、戦争中軍事工場に動員されてね、空襲の時、機銃掃射で一発食らったことがあるよ、幸いたいしたことなかったけどね」
「あらまぁ(^_^;)それは大変でしたね~」
「まぁ、それはさておき戦争が終わってから、今度は進駐軍(アメリカ軍)の手伝いで、不発弾の処理しばらくしてたよ。1トン爆弾とか。1トン爆弾って知ってる?」
「重さのことですよね、1トンの重さの爆弾」
「お!(^o^)なかなか話が分かるね~写真見る?」
そう言うとゴソゴソと家の中から一枚のセピア色の写真を持って来てくれました。
「この真ん中に写ってるのが回収した1トン爆弾なのさ」
「あら!(@_@)想像以上に!」
「大きいだろ~(^.^)人間とおんなじぐらいの身の丈があるんだ」
「こんな物がボンボン落とされてたんですね(-_-;)・・後ろに並んでいる人達は?」
「爆弾処理班の進駐軍と、手伝わされた仲間達さ。あいつらどこをいつ爆撃したかとかちゃんと記録とってるから不発弾がどこらにあるのかもある程度分かってたみたいでな・・・・でもやる気がねぇんだよ(^_^;)適当なんだな仕事がよ~」
「え~(^^;)無責任じゃないっすか」
「俺に言うんだよ、このあたりには何百発も不発弾があるんだから、お前に白いヒゲが生えて、背骨が曲がっても全部掘り出すことは出来ないぞ~って。実際この年になってもまだ見つかるんだからあの米兵の言ったこともでたらめじゃないのかな・・・(^_-)?」
「ホントですか~なんでそんなに不良品が多かったんでしょうね・・いや待て!それで命が助かった人もいるわけだからその意味ではよかったのかもしれないけど」
「それそれ!そうなんだ。それで助かった人もいる(^^)・・それに全部が不良品って訳じゃないんだぞ」
「うん?不良品じゃないんですか(^_^;)」
「実はな~わしが掘り出してた形の爆弾って言うのは信管っていうのがあって、それをひっぱたくと爆発するわけだ・・」
「ふむふむ・・・」
「その信管が前と、後ろに一つずつ付いてる。後ろに羽が付けてあるから大抵は前向きに落ちてきてドカンだな」
「・・・(^^;)」
「たまにへそ曲がりがいてお尻から落ちてもいいように、後ろにも信管があるわけだ」
「なるほど(^_^;)」
「それでももっと変わったのがいて、真横になって落ちてくる奴がいたとするだろ?下が柔らかくてはずまずに埋まっちゃえば・・・」
「横には信管がないから・・」
「そう!ご正解。不発弾になるって寸法さ(^_^)」
「なるほど~それが不良品じゃない不発弾ですか・・・」
「お兄さん、これから先も不発弾が出てくるかもしれんけど、その時のニュースみて、爆弾が真横だったらサ、この爺さんのこと思い出してくれよな(^^)」
当時はさぞかし苦労なさったろうと思うのに、お爺さんは不思議な程明るい表情で大切そうに写真をしまった。
もう二十年近く前の話、建物も建て替えられ、お爺さんは亡くなったとうかがった。
けれども僕は「不発弾発見」のニュースを見るとこの時のお爺さんの会話を懐かしく思い出す。
そして、周りにいる人達に向かって話すのだ。
「この爆弾、なんで不発になったか知ってる?」