東日本大震災 2

引っ張り出してくれって言うけど・・・

打診検査、注入作業の様子

本人も廻りもペンキだらけ、まだ足場はギシギシ言ってるし、しかしそこはためらってる暇もなく、足場の隙間から潜り込むと親父殿の体をひっつかんで、痛がる親父の声を尻目にグイグイ引っ張り出した。
「イテテテテ・・・泰治(私)頼みがある・・・」
「なんだよ?しっかりしろ」
「みっともないから、誰にもわからないように車のところまで連れて行ってくれ!(>_<)」

「無理だろ~(汗)この格好だぜ」
基礎廻りや地面には、汚損防止のためにブルーシートでしっかりと先に養生を行って、その上に足場を組んでいただいていたので、親父の撒いたペンキは全てブルーシートの上でとどまっています。

入口門扉は飾りを外し旧塗膜全撤去

後日清掃を行おうと養生を剥がして見ても、まったくと言って良いほど建物近辺を汚していませんでした。

しかしその分、僕たち親子はその溜まったペンキの上を這いずって外に出てきたわけですから全身がペンキだらけ。

考えてみると僕らの体で吸収したから地面に流れた分はその残り。

床が汚れなかったのも当然と言えば当然かも。

「みっともないからよ~(T_T) 見つからないようにそっと車まで連れてってくれ」
「無理無理。境内抜けていくのに目立たないわけないだろ」
ペンキの固まりみたいになった親父を背負った、これまたペンキまみれの僕がそう答えながら足場の外に出るとすぐさま大騒ぎ。機転を利かせた職人がすぐに救急車を呼んでくれました。

軒先梁の中塗作業

幸いたまたますぐ近くにいたという救急車のかたが10分とかからず来てくれたのですが、そこでハタと気が付いた。上着だけはなんとか脱がせたもののこんなボロ雑巾、いや、刷毛、ローラーの類と変わらない服を着たまま救急車になんか乗れるわけがない。
「すみません、今ハサミ、いやカッターで全部切っちゃいます・・・」
「馬鹿いってんじゃない!そのままでいいから乗せなさい!」
なんともありがたいお言葉。そのままの親父をストレッチャーに載せて多摩総合医療センターまで運んでくださいました。同乗した兄の話では、病院ですぐに裸にヒン剥かれてしまったそうですが・・・
この時の救急隊員さんには本当に後光が差して見えました。

現場に残った私はすぐに現場の後片付け。さらには後からお見えになった警察の方と事故の現場検証が残っていました。

一部始終を聞きき、メモをとる刑事さん
「なるほど、わかりました。大変だったね。

 ・・・でもね、今東北の方はもっと大変なことになってるんだよ。無線でどんどん情報が入ってくるんだ・・」
すると今度は別の救急隊員の方が走り込んできて
「すみません!けが人の方はどちらですか!遅くなってしまって申し訳ありません!」
そう言って深々と頭を下げました。
「え?もうすでに別の救急車の方が病院へと運んでくださってますが・・・」
後で聞いた話ですが、消防署の方でも要請の多さに混乱、情報が錯綜してしまったそうで、まだここにけが人が残っていることになっていたとか(^_^;)

この地震どうやらただ事じゃないなと実感しつつも混乱していた現場から、夕方になってやっと会社に戻ると大渋滞の中病院へと急ぎました。


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