東京都府中市の外壁塗装、塗り替え業者、有限会社不二塗装です。府中市はもちろん、八王子市、日野市、拝島市など東京都多摩地区を中心に塗り替え、リフォーム施工を行っております。
自分達で組んだ丸太足場の上から落ちた前社長(親父)の元に駆けつけると
「親父大丈夫か!?」
「う~ん・・・う~ん・・・」
「どこか打った? どこが痛い?」
「分からないけど・・・体中が痛い・・・」
思ったよりもしっかりした受け答えに少々ほっとして改めて辺りを見廻すと、左手にはペンキの『下げ缶』がしっかり握られていいます。
何がおきても下げ缶だけは手放さない。
この心がけは『さすが職人魂!』と褒め称えるべきなのかもしれないが、残念ながら本人ごと落ちていたのではまったく意味がない。抱え込んで落ちたのか全身ペンキだらけ・・・自の体を犠牲にしてペンキの飛散を最小限に抑えたという点では全くの無意味ではないといえるかも。
「どこから落ちたの?」
「一番上・・・」
指さした先は二階の破風板。
「あの破風のところ、座ってやるように三段目を架けただろ? でも端の方で高さが中途半端だったから下側を丸太に寝転んで塗ったんだ・・・」
「馬鹿だなぁ・・・」
「背中に飛散防止ネットあったから体をちょっと預けたら、ずるっと落ちた!」
本当に馬鹿である。あんなネットに人の体を支えられるわけがない。
「あ~イテテ!背中が痛い! 早くここから動かしてくれ・・・(T_T)」
「おっと、そうだな(@_@) ゴメン。ゴメン」
思いのほか元気そうな声にほっとしながら親父を抱き起こした。
痛みを訴えている背中にも外傷はなく、手足も動く。
親父が落ちてきたのは足場の3段目。高さは三間だとして5.4mぐらい。それでも人間無事で済むのか?あんなに大きな音がしたのに?
(足場にところどころ掴まってスピードを落としてきたのかな?)
しかしながらその左手にはいまだに下げ缶が・・・刷毛がすぐそばにあるのを見るとそちらの方も最後までそれを手放さなかったことを示しています。
つまり両手はふさがったままだったわけです。
(新聞配達のおじさんは、上から「落ちてきた」って言ってたもんな)
どこにも掴まらず直接落ちたとしたら、いくら地面が土だからと言っても、この程度ですんでいるのは奇跡と言っても良いのでは?
「あいててて(>_<)!あんまり強く引っ張るな!」
「我慢しろよ(^^;)もう少しだから・・・」
当然のごとく私もペンキだらけになりながらやっとの事で親父を足場の下から引きずり出す事が出来ました。
あらためて確認してみると親父の体は激しい打ち身以外は大きな怪我がない様子。
当時としては珍しくヘルメットをしっかりかぶっていたのも良かったのでしょうが、本当に幸運だったと言えるでしょう。なにせ建物の反対側にいた私の足元が「ズン」と揺れたぐらいの衝撃があったのですから。
やっと落ち着いてきた親父をしばらく座らせておいて事故現場の後片付けをはじめることにしました。まずは地面のペンキを掃除しなければなりません。
「これを掃除するのは結構大変だぞ・・・ん?(-_-;) あれ?なんだこりゃ?」
さっきは自分も動転していたので気が付きませんでしたが付近にプラスチックの破片がたくさん散らばっている事に気が付きました。色は白。
「あ!そうか!(^o^)分かった! フラワースタンドだ!」
この空き家のこの場所に古ぼけたプラスチックのフラワースタンドがあったのです。
植木やプランターを載せて飾る三段の白い棚。もうほとんどゴミと化した古いそのスタンドを私達は建物から少し離したその場所に移していたのです。
親父はちょうどその上にドスンと落ちてきた。元々風化して脆くなっていた命の恩人は、抵抗なくバラバラと崩れることで相手を傷つけることもなく適度なクッションとなり親父を救ってくれたのでした。