「え?銀行に勤めてたの!(@_@)」
思わず僕が聞きかえすと、浅黒い肌の掃除屋さんは、ちょっと誇らしげに笑った。
「ソウデス(^-^)ギンコウ。BANKデス」
「銀行員ってエリートじゃん!なんでそんな人がこんなところで3K(危険、きつい、きたない)仕事してるわけ?(^_^;)?」
時はバブル華やかなりしころ。
我々建築業界はまさしく3K仕事として嫌われて人手不足。
新築ラッシュで、リフォームまで手が回らなくなって大変長くお持たせしてしまう時もあったくらいの忙しさ。
この頃は外国人労働者の方々が結構場末の現場にも見かけられました。
施工スケジュールの方も過密で、別の業種が同じ現場でかち合うなんてことは日常茶飯事だったのです。
建売一軒に三業種、四業種が同時に仕事しているなんてよくあること。
塗装工が和室の柱にワックス掛けをしてる隣の部屋で、見知らぬ掃除屋さんが床にワックスを掛けているのもこれまたよくあること(笑)
本来なら喧嘩になってもおかしくない状況なんですが、そこは人間同士、仲よくなることが出来れば作戦会議も開けるわけで・・・
「じゃあ俺、先に二階やる」
「ウチは今日、中に入らないで外部やる」
「夕方から階段だけ塗らせて」
今から思えば当時の方が他の業種の人達のこともよく知っていたし、工務店の旅行なんかも盛り上がったものでした。
仲よくなるためには、会う人にはまず「笑顔で挨拶」。
そして、3時と10時の休み時間には缶コーヒーの一本もご馳走しつつ、世間話などするのが一番です。
「掃除屋さんどこから来たの?(^^)」
「えじぷとデス」
「へぇ~。エジプト!エジプトの掃除屋さんなんだ(^_^)」
「イエイエイエ、えじぷとデハ、ギンコウイン デシタ(^^)」
これで冒頭の会話に戻ります。
当時、こういった外国人の方々がキッチリとした労働資格を持っていたのかどうかは今となっては、グレーゾーンです。けれども、日本に来ることが出来たという時点でかなりの学歴の持ち主だったといえるのです。その証拠に、母国語以外に最低でも日本語が話せるわけですから・・・
「なんでそんな人がこんなところで3K仕事してるわけ?(^_^;)?」
「ア~、ソレハ えじぷと ノ ギンコウヨリ、ニホンノ ソウジヤサン、オカネタクサン モラエマス」
「(^^;)そうなの?あなた、すごい勉強したんでしょ?ちょっともったいない気がするけど・・・」
「ダイジョブ、オカネ タメル。ニュービジネス えじぷと デ ハジメル、プランデス・・ライフプラン。ワカリマスカ?」
「お~なるほど・・・」
「・・・ジツハ、ワタシ、(辺りを見回してから)ユニバーシティ・・・ダイガクイキマシタ(^_-)」
「ダイガク?(正直ちょっと馬鹿にされた気がしたので)・・・僕も出てるよ^^;」
「(*_*)!!! オ~! Can your English talk?」
「え?ノーノー!ジャパニーズオンリーね(大汗)」
「Why is it?(@_@)」
「いいの、いいの。日本の大学は種類が(数も)たくさんあるの!(^_^;)さあ仕事しようっと」
「・・・(?_?)」
「ふん♪ふん♪ふん♪と・・・」
「・・・・ソノぼーどハ、ナンデスカ?」
「これ?『神棚』だよ。んーっとジャパニーズ、ゴット、プレイス。分かる?」
と柏手を打ってみる。
「オー(@_@) アブナイ」
「え?何が?(?_?)」
「・・・アナタ イイヒト。ダカラオシエマス。ソノカミサマ ヨクナイ ワルイコトオコリマス(=_=)」
がっちりと後ろから羽交い締めにされてしまった。
「(>_<)ノー!ノー! ビジネス!デスイズ!ビジネス」
「びじねす・・ソレハタイセツ ・・シカタナイネ(/_;)」
「ほっとけ!(^^;)日本にはカミサマたくさんいるんだぞ、あんたはピラミッドでも拝んでろ!」
と、ここまで書いて気が付いたけど、ピラミッドってお墓だ。
彼の宗教はなんだったんだろう・・・
カミ ノミ ゾ シリマスネ(なんちゃって)