そして誰もいなくなった・・・1

これもまたバブリーな時代、いや、当社の社長が小僧の時代ですからもっと前ですね(^_^;

日本列島改造論からちょっとたっていても、まだまだ高度経済成長期。

一山全体を住宅分譲地にするとか、大規模開発でどんどん家が建っていった時代。
当時は、塗り替えよりも新築の仕事量の方が圧倒的に多く、新建材既製品で作られる今の家と違って家の中も外も塗装する部分が多かったんです。外壁はもちろん、アルミのベランダや柵もなく全て鉄製、家の中の木枠も現場塗装、建具だってそうですし、中階段だって現場で大工さんが一段一段作り上げたものを塗装する・・・
例えば昔、親父に連れられて現場に行きクロス張りの下地のボードに打たれている釘の頭の一つ一つを小さな刷毛でチョンチョンと塗っていくのを手伝わされた記憶があります。釘の錆が布クロスの表面に出ないようにそうしてたんですね。今はステンレスの釘もあるし、メッキの質もいいし、張っているのもビニールクロスだしで、一度若いクロス屋さんにその話をしたら信じてもらえなかった位です(^_^;

私が本格的に始めた頃はもう今と同じ機械で糊をつけるビニールクロスになっていて、布のクロスなんていうのはほとんど出会わなかったです(西陣織とかの超高級品はありました)

大工さんの造作が終わると追いかけるように木枠や棚、階段を着色してニスを二回。そのすぐ後にクロス屋さんと建具屋さんが控えていて・・・というかホントにそこにいて待ってる、なんてことも日常茶飯事でした。

外部だって雨樋を取付にきたに板金屋さんや、玄関絡みのタイルを貼りに来たタイル屋さんと

「もう来たの?(^_^;」

「まだなの?」

の言葉が挨拶代わり。
ですから、何かの原因で工事が遅れてしまうと、一軒の新築工事現場に複数の業種の職人達がそれぞれの車でわらわらと集まって大騒ぎなんてことも結構ありました。

それでも敷地内に収まる台数ならいいんですが、それを超えてしまうと当然一般道に何台もの車が連なって・・・てんやわんやです。

さてさて、そんな時代のある日、午前中別の現場に寄ってから昼過ぎにもう一つの現場に行くことになりました。
(車止められるかな?)

都内の狭い敷地の現場なのでこういうときは後から現場につく方が圧倒的に不利。しかも引渡間近でバタバタしている現場です。
たばこ屋さんの角を曲がって現場前の通りへ。と、意外なことに・・・
「車がない・・?」
助かったと思いながらも半信半疑。でも確かにこの道です。車を現場の前に横付けしてふとみると、ついさっきまで、誰かが仕事をしていたように道具があたりに散らかったままです。
「こんにちは~!」
やっぱり誰もいません。しかし、建てられた脚立や道具に見覚えが。
「板金屋さんかな?」

玄関前を見ると張掛けのタイル・・・部屋の中では作業灯もついていて丸鋸も出しっぱなし。おがくずの香りもかぐわしい。
「なんだこれ?昼はとっくに過ぎてるし。まるで人だけが消えちゃったみたいじゃん(^_^;」
こうなるとさすがにちょっと気味が悪い。

頭の中に、何かの本で読んだ「人間だけが消えて漂流していた船の話」が・・・
ここが噂のバミューダートライアングル?


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